特許事務所の将来性について解説!

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小泉元首相が行った2002年の知財立国宣言以来、弁理士数は増加の一途をたどり、2021年5月31日時点で弁理士数は、11,000人を突破しました。
一方、受験者数は2008年をピークに減少しています。
また、2014年度の弁理士試験以降、合格率もかなり低くなっています。
2013年度では合格率が10.5%、合格者が715人だったのに対し、2014年度では合格率が6.9%、合格者が385名となっており、合格率、合格者ともかなり少なくなっています。

以後も減少を続けており、2016年以降、合格者数は200人台でかなり少なく推移しています。
また、合格者の半数以上が企業勤務者となっていて弁理士登録を行わない人も多いことも一因となり、弁理士数はあまり増えていません。

このような状況の中、特許事務所の現状と知財を取り巻く近年の環境から見て、今後、特許事務所の将来の見通しはどのようになるか解説します。

 

特許事務所の将来性について~業界の現状~

知財業界はここ数年で大きく変化し、転職市場も少しずつ変わり続けています。
そのため、将来性を予測する前に、まず弁理士・特許技術者の属する知財業界の現状について解説します。

 

①弁理士人口はどのぐらいか?

先に記載した通り、近年、弁理士資格に合格する人数は徐々に減っています。
2013年度までは弁理士試験は合格率が10%を超え、比較的受かりやすかったため、弁理士数が一気に増えた時期がありました。
現在は業務の伸び悩みにより人気が下がりつつあることや、高齢の弁理士の方が年々引退していることから、弁理士の全体数が減少してきていると言われています。
また年齢について、2021年5月31日時点で、一番多い弁理士の年代は45歳〜50歳未満で2316人(全体の20.1%)です。
次いで40歳〜45歳未満で1,958人(全体の17.0%)、50歳〜55歳未満で1,728人(全体の15.0%)となっています。
30~35歳未満は、303人しかおらず、25歳〜30歳未満に至っては42人です。
このことから年齢構成が40~55歳未満に偏っており、一方、弁理士試験合格者の平均年齢が30代半ばのため、25歳~35歳の若手の人材は非常に重宝されることがわかります。
若い弁理士はライバルも少なく活躍しやすい環境と言えます。

 

②AI技術の進歩による影響

AIの進出は大きな影響を与えると言えるでしょう。
商標出願業務や調査・翻訳の作業などはAIの得意とする分野であり、商標出願業務では登録したいロゴ画像や商品名をアップロードさせるだけで、類似している商標があるかどうかを調べることが出来るような商標検索エンジンが存在しています。
商標登録出願件数は年々増加傾向にありますが、上記のような背景から商標出願の報酬が安くなっているのも事実です。

しかし全ての業務がAIに代替されることはありません。
例えば、分野の複雑な知識が必要な上、文章力がなければ作成が困難な「明細書作成」は、AIで代替することは難しいでしょう。

 

③弁理士や特許技術者の働き方の変化

近年、弁理士や特許技術者といった知財知識のある人材を雇い、自社で出願を行う企業が増えています。
公認会計士や税理士といった他の専門職と同様、弁理士や特許技術者においても、企業に在籍し、企業の知財部で知識を活かして働くケースが増えています。

一方で、スタートアップ企業の知財戦略が今注目されており、スタートアップ企業を専門に支援している特許事務所が増えています。
スタートアップ企業はバックオフィスまで手が回らず知財部がないことが多いので、特許事務所が出願関連をコンサル的観点からサポートするケースも増えています。

スタートアップ企業は出願件数が多くないことに加え、コストを惜しまない傾向があるので、特許事務所のニーズにも合っています。
特許庁もスタートアップ企業の支援には力を入れ、出願費用を支援する制度やスーパー早期審査といった制度もあるので、今後もニーズが見込まれ注目されています。

 

特許事務所の将来性・需要について~今後の事業展開~

弁理士・特許技術者の現状や変化をお話してきましたが、将来性・需要について、今後どのようになっていくのでしょうか。
今後の事業展開を解説します。

 

①知財に関するこれまでの業務

これまでの特許事務所は、特許庁への出願手続がメインの業務でした。
リーマンショックを機に出願件数がかなり減少し、多くの事務所は、基本的には採用を抑えることで対処してきましたが、この時期は弁理士試験の合格者数が多い時代だったため、特許業界全体にとって大変な状況が続きました。
一方で、世代交代に係る新たな弁理士を雇い入れる必要がありますが、昨今の弁理士試験合格者の減少により、逆に、特許事務所側が条件に合致した弁理士を探すのが難しくなっているのが現状です。
また、大企業を中心に、弁理士合格者を多数抱えている企業もあり、勤務している弁理士あるいは未登録の弁理士試験合格者が中心となって、自社出願化を進めているところも少なくありません。
そのため従来の業務の需要は低迷しており、新たな事業展開を模索しているのが昨今の状況です。
では、以下に今後の事業展開について解説していきます。

 

②外国出願と国際出願

弁理士業務は、国際的な要素が多くあります。
一方で、企業同様、外国案件業務を苦手とする特許事務所も多いのも現状です。
例えば手続の内容や必要書類及び審査の基準が日本と異なっていたり、審査能力及び現地代理人の能力が日本に比べて高くない国も多かったり、経験がないと対応に苦慮する点が多々あります。

そのため、外国案件に精通し、出願前から的確なアドバイスを行える特許事務所は差別化ができ、外国案件の仕事の依頼が増えるでしょう。
さらにこれらの外国向け出願は費用が高額になるため、公的機関が外国出願補助金の申請を受け付ける「中小企業等外国出願支援事業」を利用する場合も増えています。
このような補助金の申請は、原則として、公的機関と出願人とその代理人である特許事務所の三者間契約により手続が進められるため、出願人が申請手続を希望する場合、手続経験があれば出願人に適切なアドバイスを行うことができます。

 

③訴訟案件

また、非常にハードルは高いですが、知財に関する訴訟案件も挙げられます。

特定侵害訴訟代理業務試験に合格すると弁理士登録簿にその旨が付け加えられます(通称、「付記弁理士」)。
付記弁理士は全弁理士数の3分の1以下ですが、知的財産権に関する侵害訴訟の依頼を受けた場合、付記弁理士でなければ補佐人として訴訟手続を行うことしかできません。
付記弁理士であれば訴訟代理人として訴訟手続を進めることが可能となります。
ただしどちらの場合も弁護士が代理人として存在していることが条件となりますので、弁理士が単独で訴訟手続を行うことはできません。

また、知的財産権に関する全国地方裁判所における第1審の民事事件数は約500~600件程度であり、近年も件数に増減はみられません。
しかし、IoT時代に突入し、関係する技術分野が広がり、今後は係争案件が増加すると考えられます。
特にIoT分野は国際的な出願案件が多く、外国の出願人による日本出願も増加していますので、侵害訴訟の件数は今後増加する可能性があります。

 

④知財に関するコンサルティング業務

最近、日本弁理士会は「弁理士知財キャラバン」に力をいれています。

「弁理士知財キャラバン」とは、新規事業の立ち上げや販路開拓等に悩みを抱えている中小企業・スタートアップ企業を対象に、特許・デザイン・ブランド・コンテンツ・製造ノウハウなどの知的財産を活用して円滑に経営戦略が実行できるよう、弁理士が訪問し、課題の抽出とその解決策の提案等を行い、知財経営コンサルティング支援を行うというものです。
現状、なかなか浸透しておらず、未だ「出願依頼に繋げるためのコンサルティング」という意識が強いですが、出願以外にも知財経営コンサルティングが浸透すれば、将来的には新たな事業として期待できるかもしれません。

 

まとめ

上述の通り、他の業界と同様、弁理士の競争も激しくなり求められることも高度化していますが、知財分野は専門性が高いため、異業種からの参入は難しいと考えられます。
その意味では、特許事務所の将来性は高いと言えますし、専門分野を磨くことにより、さらなる強みを持つことが可能となるのではないでしょうか。



 

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